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家づくり|トラブル発生時の買主の権利
不具合が生じたときは
住宅を建てた後、生活に支障をきたすような欠陥や不具合が生じた場合、どうすればよいのでしょうか。欠陥やトラブルを未然に防ぎ、万が一紛争が生じた場合にも、消費者保護の立場から、紛争を速やかに処理するための法律があります。
住宅の消費者を守る法律「契約不適合責任」
引き渡し後の新築住宅に契約内容と異なる部分があった場合に、施工会社が負う法的責任を「契約不適合責任」といいます。施主は、施工会社に不具合の補修、代金減額、損害賠償、契約解除を請求できます。ただし、不具合を発見してから原則として1年以内に施工会社へ通知する必要があります。
※文中に頻出する「瑕疵(かし)」とは…キズや欠陥のことで、経年の劣化とは異なり、建物が完成したときから存在する不具合のことです。完成時に見落とされた瑕疵に対して、売主が買主に対して負う責任を「瑕疵担保責任」といいます。
民法改正
「契約不適合責任」は、2020年3月末までは「瑕疵担保責任」といわれていたものです。民法改正により2020年4月以降、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わり、買主の権利が広がりました。
・民法改正前…「隠れた瑕疵」、つまり通常の注意では見つけることができない欠陥などに対してのみ、売主の責任が認められていました。しかし、この「隠れていたかどうか」の判断が曖昧で、売主と買主の間で紛争の火種になることも多く見受けられました。
・民法改正後…「欠陥が隠れていたかどうか」に関係なく、「契約内容に適合しているかどうか」を基準とする制度へと見直されました。これにより、取引の透明性が高まり、責任の所在が明確になることで、紛争の防止と問題の解決が進みやすくなりました。
瑕疵担保責任との違い
■旧制度(瑕疵担保責任)
・対象…隠れた瑕疵(見えない欠陥)のみ
・判断基準…欠陥が隠れていたかどうか
・通知義務…瑕疵を知って1年以内
・時効…なし(個別に判断)
■新制度(契約不適合責任)
・対象…契約内容に適合しないもの全て
・判断基準…契約内容に合致しているかどうか
・通知義務…不適合を知って1年以内
・時効…原則「知ったときから5年」または「行使可能時から10年」の早い方で消滅
たとえば、契約書で「高断熱仕様」と記載されているにもかかわらず、実際には断熱性能が基準に達していない住宅が引き渡された場合、売主は責任を問われる可能性があります。契約そのものが判断基準となるため、買主にとっては不利益な条件に縛られにくくなっています。
買主の不適合への対応策
■追完請求権
・内容…修理や交換、代替物の提供を売主に請求できる
・主な条件…軽微な不具合も含む。買主の選択によって行使される
■代金減額請求権
・内容…不具合の程度に応じて代金の減額を請求できる
・主な条件…追完ができない、または不相当な場合に選択されやすい
■損害賠償請求
・内容…修補や交換では解決しない損害を金銭で請求できる
・主な条件…売主に「帰責事由(過失など)」がある場合に認められる
■契約解除
・内容…売買契約を解除して、代金返還などを求めることができる
・主な条件…不適合が重大で、契約目的を達成できない場合に限られる
※以前は「損害賠償」と「契約解除」の2つしかありませんでしたが、【契約不適合責任】では、上記の4つが認められています。これは、単に不満を申し立てるだけでなく、具体的な請求権として行使できる点が大きな特徴です。
具体例
■追完請求
引き渡しを受けた新築住宅に雨漏りが発生。
→売主に対して、屋根の修理を要求。
■代金減額請求
床材の色が契約仕様とは異なるが、張り替えには大規模工事が必要。
→張り替えを諦めて、その分の金額を減額請求。
■損害賠償請求
引き渡しを受けた新築住宅に施工ミスが判明。仮住まいをする必要が生じた。
→余分に生じた家賃を請求。
■契約解除
基礎工事に重大な欠陥があり、住宅が傾いて居住に適さない
→契約そのものを解除し、支払い済みの代金を返金請求。
まとめ
買主が売主に対して契約不適合責任を追求する場合には、原則として、不適合を知ったときから1年以内に売主に対して通知をする必要があります。
ただし、新築住宅については、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって、期間制限に関する特則が定められています。具体的には、「雨水の侵入を防止する部分」と「構造耐力上主要な部分」に、引き渡しから最低10年間の瑕疵担保責任(契約不適合責任)期間を設けるというものです。ただし、この場合にも瑕疵を知ったときから原則として1年以内に売主に対して通知をしなければなりません。